久々に生観戦したNOAH・カルッツかわさき大会、もう2週間経ちましたが、少し観戦記を書いておきます。大会内容はあまり書かない観戦記。
NOAHのビッグマッチとしても注目の大会でしたが、自分が会場に行くと決めた最大の理由は、音声ガイドでした。その体験記。
プロレス音声ガイド
NOAH・カルッツ川崎大会では、プロレス音声ガイドが行われました。これは、目の見えない方に向けてもプロレスを伝えようという取り組みです。
当ブログでも、過去に少し紹介しています。
■「視覚障害者と楽しむプロレス音声ガイド」特集をTBSラジオ「アフター6ジャンクション」で7月21日に放送: プロレス専門ブログ・ブラックアイ3
http://blackeyepw.com/article/188845509.html
こちらでラジオのアーカイブが聞けます(公式・無料)
■特集:プロレスを“耳”で楽しむ『プロレス音声ガイド』特集 by DDブラザーズ」 ? TBSラジオ「アフター6ジャンクション」 ? Podcast ? Podtail
https://podtail.com/en/podcast/tbs-6-1/--by-dd/
このブログを定期的に読んで下さってる方はご存じでしょうが、私は2013年頃より視覚障害者となりました。
全盲デハナク、目の中央ナド部分的に視界が欠けるロービジョンと呼ばれるものです。日常生活はまぁまぁ影響アリ。文字が読めません。
プロレスは、テレビで見る場合なら画面に近づくことでほぼ見えているのですが、会場観戦となると難しい。
最近は、スマホのカメラアプリ等を使い、拡大させて見ています。
過去にはデジカメやiPadで観戦していましたが、今は画面が大きめのiPhone12 proMaxを、高いけど購入。カメラのズームもこれまでのiPhoneで最も近づけかなり良い。
でも限界はありまして、やってることの5割以下しか分からない。リングまでの距離や照明の明るさにもよりますが。
普段はTwitterで、その団体のハッシュタグを追いながら、ファンの方の速報ツイートで情報を補足し、何とかついて行くのですが、もう音声ガイド付とあれば強力な味方。
NOAHの川崎大会において、昨年に続き2度目の音声ガイドが実施に。
川崎在住でプロレス好きで視覚障害者の自分のためにあるかのような試み、しかし昨年は予定合わず参加できず。
今年、念願の初体験。
その様子を書いていきます。
イヤホン二刀流
視覚障害者向けには呼びかけもあって合同での観戦も行われたそうですが、自分は直前まで行けない可能性もあったので、個人で7000円のチケットを購入しています。音声ガイドを聞くのには、FMラジオが必要(。会場でも貸してくれます)。体育館近辺のみ聞ける周波数で流されます。
席について気づく。自分はiPhoneを利用する際に、ボイスオーバーという視覚障害者用の読み上げ機能を使うのですが、外ではそれを聞くためにイヤホンが必須。観戦中にもスマホを捜査する時はある。
なので、右耳に音声ガイドのFMラジオ音声、左側にスマホ捜査音声、それぞれのイヤホンを耳に入れることに。
どうなるかと不安であったが、聞きたい方に集中すればいいので、思ったより混乱することはナシ。
本戦開始前の第0試合、ケンドー・カシンvsキング・タニーの、N-1出場者決定戦から音声ガイドは開始。
当たり前だが、ラジオなので遅延は全くなし。ネットを通すとこれがダメですね。音声もクリア。
実況はお二人いる。
バリアフリー活弁士の檀鼓太郎さんと、バリアフリー音声ガイド作成者の鈴木橙輔さん。
実況・開設でなく、実況が2人。
1人が赤コーナー側、もう1人が青コーナー側を担当し、片側だけの動きを伝える。
これがプロレス音声ガイドの軸、通常の実況と違う点。
いきなりカシンvsタニーというトリッキーな攻防が連発される試合も、十分理解できた。特に場外乱闘は全く目では分からないので助かる。
これはいいぞ。
本戦開始。
もう1つ通常実況と違う点は、プロレス音声ガイドでは、「技名」だけを言っても伝わらないため、その動きを細かく伝えなければならない点。
基本的に音声ガイドを聞くのはプロレス初心者なわけで、「不知火」とか言われても意味不明。
技名より、どういう形なのかが先に説明しなければならない。
これがしかし、今時のプロレス技は複雑で、説明もなかなか大変。
GHCジュニアタッグ選手権は、スピーディーでオリジナルな技が次次と繰り出されるのでさすがに厳しそうではあった。
一方で余裕があれば情報も追加される。
正面から飛びけりで遠くに吹っ飛ばしたことをまず説明し、そのあとに「この技はジョン・ウー」と足す。更にまだ次の動きになる前に、「なぜジョン・ウーという名前なのか、映画監督名でもあって…」まで続ける。
この辺りの、話す間合いの使い方と、お二人のプロレス知識には唸らされます。
セミの魔流不死&論外vs小川&HAYATAも、いろいろ難解な試合で大変そうではあったが、金的を巡る授受繋ぎのような展開は見事に実況。
周りに視覚障害者の方がいるようで、ラジオからは漏れ出た笑い声も聞こえてきます。
リング上での消火器攻撃は伝わったのだろうか?
メインは大一番の杉浦貴vs田中将斗のダブルタイトルマッチ。
この試合のハイライトは終盤のエルボー撃ち合い。スピード重視でなく、一発一発がバチンバチンと突き刺さるもの。
このとき音声ガイドでは、お互いが肘をぶつける度に「エルボー」「エルボー」と交互に連呼。あえて名前を言わず、2人が担当の選手が放つ度「エルボー」とだけ発する。
細かい説明をしないほうが、あの緊張感と重厚さが伝わるとの判断。なるほど。
一つだけ、これは仕方ないのですが、選手入場時に大音量のテーマ曲がかかると、ガイドの声はかき消されてしまっていました
この日は音響にかなり力が入っていたこともあり、特に聞こえにくかったのかもしれません。席の場所によっても聞こえ方は違うのかもしれませんが。
まぁでも、気になったのはそのぐらいです。
目が悪い方すべてに伝わったのかは分かりませんが、ある程度のプロレス知識がある自分には、メチャクチャ有り難く、会場にいながらも、ここまで"置いてけぼり”を感じなかったのは久々です。
試合の流れが理解できていると、スマホで動きを追いやすくもあり、これも有り難かった。
また音声ガイドを聞きながらプロレスを見たいと強く思ってしまいましたね。
企画して頂いた大原はじめ選手にも大感謝です。
もちろんNOAHにも。そして音声ガイドを担当して下さったお二人も。
<そのほか>
・入場の際に席まで誘導して下さった方、ありがとうございます。
今、考えると会場の係でなく、NOAHのスタッフの方だったかも。
・前に行った時も書いたのですが、会場のカルッツかわさきは、天井・壁・床・手すり・椅子・階段、全てが真っ白で統一されていて、綺麗ではあるのだが、ロービジョンで色と色の境目が見えにくい自分には最悪の会場です(笑)。階段だけでも端に濃い色を塗ってほしい(上がる場合には境目が見えるような形状になっていたが、自分は降りるほうが圧倒的に恐い)。

・階段は使いにくかったが、最近、視覚障害者の施設で歩行訓練したことが役立ち、一人でもぼり折りできた。
・コロナとなって、自分には観戦の障壁となっていた「チケットの裏に住所・氏名などを書く」という作業(字が読めないと、字が書けなくなるんです)、ある方法で突破。今度は別の団体・会場で試す。
観戦自体が久々であり、興行としても良かったのでかなり楽しめました。
自分が会場観戦する場合は、面白かったかどうかより先に、どのぐらいまで内容が理解できたかが満足度の目安になってしまっていたのですが、今回はその先まで行けた気がします。
音声ガイドに改めて感謝。
終わっての飲食は避けるべきなので、帰宅後にビールを頂きながらスペース(Twitterの音声チャット)を居酒屋代わりにやてました。
音声ガイドをされていた鈴木橙輔さんが参加して下さり、いろいろ聞けて楽しめましたよ。
大満足な一日に。
ワクチンも2回打ち終わったので、9月からは少しずつ会場に行く機会を増やしていくつもり。
なお、鈴木橙輔さんによると、プロレス音声ガイドは団体問わず声がかかれば行う準備があるそうですよ。
■(16) 和風まくだ煮L(鈴木橙輔“だいすけ”)ばっかりばっかりさん (@kgwmsd) / Twitter
https://twitter.com/kgwmsd?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
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